瀬戸内海について
来島海峡
  • 来島海峡は瀬戸内海を横断する航路で最大の難所です。愛媛県と広島県をむすぶしまなみ海道があり、四国と本州を結ぶ3つの高速道路のうち、一番西側のルートです。
  • 来島海峡は大きくカーブして向きを変えながら進んでいきます。来島海峡航路(水色の線)が設定されていて、来島海峡海上交通センターが航路管制などを行っています。来島海峡大橋(黒線)がある水道部は3つに分けられていて、四国側から「西水道」「中水道」「東水道」となっています。西水道と中水道の間に馬島があります。来島海峡航路が設定されているのは西水道と中水道で、この2つを大型船は航行します。東水道を航行する船は少なく小型船のみです。図で来島海峡航路の部分には西水道と中水道を通るルートの2本の線を描きました。普通に考えると、船は右側通行ですので、東に向かうときに西水道、西に向くときに中水道のように感じますが、ここでは潮流によって違うルールが適用されている世界的にも珍しい海峡になっています。
  • まず、潮流が北流(図で水色矢印の方向)のときです。このときは通常の想像通り、東航船(東に向かう船)が航路を右側航行で西水道、西航船が中水道に向かうルールになります。
  • 特殊なのは潮流が南流(図で水色矢印の方向)のときです。このときは、来島海峡航路は左側航行のルールになります。東航船が中水道、西航船が西水道を航行します。このため、来島海峡航路以外では右側航行し、東西両方の航路の出口付近では西航船と東航船の進路が交差する状態になります。それぞれの船は早めに反対側に横切るなどしていることがあります。この特殊なルールがある理由は西水道が狭く航路が急カーブしているため、後ろからの潮流のときに危険なためです。西水道は操船しやすい逆向きの潮流のときだけに通過します。また、巨大船は西水道を航行することができず、潮流の穏やかな時に中水道を航行するルールになっています。そのため、巨大船が来島海峡を通過できるのは1日数回のタイミングで隻数も制限されます。
    もし、航路を航行している時に転流(潮の向きが変わる)の時間を迎えた場合は、航路内で途中から右側通航と左側通航を入れ替えます。航路内は危険なので、来島海峡海上交通センターの指示で順番に行われます。
  • 大島にある亀老山から見た来島海峡大橋です。橋が3つ連続になっていて、一番奥が西水道、真ん中が中水道、手前が東水道です。ちょうど、赤茶色の船が左側航行で中水道に向かっています。
  • 四国側から見た来島海峡大橋。手前が西水道で正面の島が馬島です。左下に見えているのは糸山公園。
  • 西水道を東航している名門大洋フェリー。右に左に大きく舵を切りながら進みます。普段は夜間航行です。
  • 西水道です。航路内をコンテナ船が東航しています。手前の小型フェリーは航路外を北上しています。離島航路のフェリーやタグボートは航路外の西水道を通ることがあります。手前にある灯標から左に延びる波跡で潮流の速さがわかるかと思います。
  • 馬島から見た中水道です。西水道より直線になっているとは言っても島が多いです。右側に見ているのが中渡島です。
  • 中渡島は1周1kmの無人島ですが、来島海峡で大きな存在感のある島です。
  • 中水道を西航する「ニューながと」。島との距離が近いです。
  • 中水道を航行するフェリーから見た中渡島
  • 来島海峡大橋は徒歩でも歩くことができますので、巨大船を橋の上から撮ることもできます。このクラスの巨大船を橋の上から撮れるのは国内でここだけではないかと思います。
    船を眺める「来島海峡大橋・馬島」
  • 定期航路では夜間航海になりますので、道路のライトに照らされた来島海峡大橋の下を潜ります。
  • 波止浜から見た来島海峡大橋。左手の島は来島です。小さな島ですが30人ほどの住民がいます。
  • 来島海峡の潮流は速く、川のよういに音を立てながら流れていきます。この狭くて潮流の早い場所も、波止浜の造船所に出入りする大型船が通っていきます。
  • 来島海峡は霧が発生しやすい場所でもあります。潮流でかき混ぜられて冷たい海面に出た霧は船の航行にも大きく影響を与えます。霧が濃くなると、来島海峡航路には航行制限が出て大型フェリーも航路に入れなくなります。
  • 来島海峡航路を管制しているのが、今治市の高台にある来島海峡海上交通センター(来島マーチス)です。
  • 四国側の北端、大角鼻から見た景色。
  • 来島海峡の西側には、波方にLPGの備蓄基地があります。
  • 定期船は夜間航行なのが残念ですが、来島海峡は島が多く美しいだけでなく、船が航行する航路としても見どころの多い海峡になっています。