エスコートの表示板
- 東京湾・伊勢湾・瀬戸内海(海上交通安全法適用海域)の航路では、巨大船や大型タンカーなどは、エスコート(進路警戒)を行うエスコートボートやタグボートを配置することが義務づけられています。そのエスコート業務を行うことができる船は海上保安庁から指定をうけた船で、船体に指定されている内容の表示板を掲げています。多くの場合AB34Cで始まる黄色やオレンジの横長の表示です。この表示板の意味を説明します。
- エスコートはエスコートボートだけでなく、同様の能力を持ったタグボートも行うことができ、これらの地域で航路でのエスコート業務を行っているタグには同じように表示があります。エスコートを行う能力があっても、これらの航路でエスコート業務を行わない会社や地域のタグには許可表示はありません。広範囲にタグを常駐させているタグ会社では、異動によって離れたエリアでも表示を持ったままの場合もあります。
- まず、(1)の「A」の文字の有無は進路警戒船の許可を意味します。実際に進路警戒船としてエスコートする場合はもう1つの条件として本船(エスコートされる大型船)より3kt以上速い速力で航行できることが条件になります。そのためエスコートをよく行うタグボートは、全長が長く高出力のエンジンで速力が速い傾向があります。また、速力の速いコンテナ船などに対応できるように、高速力のエスコートボートを就航されています。
各航路では、全長250m以上または危険物を積載している巨大船が進路警戒船をつけなければなりません。
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(2)の「B34」などBに続く数字は、放水銃や科学消火装置など消防設備(消火能力)を表しています。B34の場合は第3・4種消防設備船です。コンテナ船などのエスコートでは求められませんが、大型のタンカーのエスコートでは、消防設備のある船も必要で、本船のサイズなどによっては進路警戒船と兼務することもできます。
第1種消防設備船:毎分1トンで30分間の泡放水能力
第2種消防設備船:毎分3トンで30分間の泡放水能力
第3種消防設備船:毎分6トンで30分間の泡放水能力
第4種消防設備船:粉末消火剤2トン以上を毎秒30kg以上の放射できる
第1〜3種の部分は泡放水の能力で、第4種は粉末消火の能力になっているため、1〜3と4は同居でき、B34のように第3・4種消防設備船となります。
各航路では、5万GT以上(液化ガスは2.5万GT以上)の危険物積載船が消防設備船をつけなければなりません。
- (3)の「C」は側方警戒船の許可を表します。側方警戒船は、大型船のエスコートではなく、大きなものをタグボートで曳航する長大物件曳航船の航行で必要なエスコートです。曳航されているものの横で警戒してエスコートするものです。進路警戒に比べると求められるものは少なく、本船以上の速力が必要になります。
各航路では、長大物件曳航船が側方警戒船をつけなければなりません。
- (4)の2桁の数字は、指定を受けている航路を表しています。ここでの航路はエスコートの規則がある海上交通安全法の航路になります。港則法の関門航路などは、独自のルールでこの表示板もありません。大きく分けて4エリアで「東京湾」「伊勢湾」「瀬戸内海(明石海峡)」「瀬戸内海(備讃瀬戸以西)」、基本的にそれぞれのエリアを網羅する赤字にした「12」「・3」「・4」「16」で指定を受けていることはほとんどです。瀬戸内海ではごく一部の船で一部エリアだけ指定受けたのをみかけることがあります。瀬戸内海が2つに別れているのは、明石海峡が第5管区海上保安本部、備讃瀬戸以西が第6管区海上保安本部である事務的な都合で、この2エリア両方で活動するエスコートボートもいますので、その場合は2枚の表示板を掲示しています。
(5)(6)は指定の交付番号です。(5)は交付した管区海上保安本部で、(4)のエリアが決まれば(5)も決まります。例えば、浦賀水道などの「12」であれば「3海」です。
- 明石海峡と備讃瀬戸以西の両方の指定を受けている日本海事興業「愛興丸」の表示板です。この会社は大阪湾から大分まで瀬戸内海全域で活動していて、広範囲(大阪から山口まで行くことも)で応援にも行きますので両方あります。2つ表示は比較的よくみかけ、並べて表示している場合が多いですが、稀に右舷と左舷に1枚ずつ表示している場合もあります。